第7回 日本在宅医療連合学会大会
一般演題(ポスター)37 生活援助・福祉用具・排泄ケア 

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在宅のハードルと「におわない介護」-排泄便臭低減システムの開発-
荒川 正人1 川上 慶彰2 奥村 勝彦3
1大林スマイル薬局 2キララ薬局白島店 3神戸大学名誉教授 

【目的】
終末期は寝たきりのリスクが高まる。多くの高齢者は自宅での最期を望むが、寝たきり時の排泄、特に便臭のハード ルに阻まれる。一方で、介護施設には「入りたくても入れない、入れる施設は払えない」のも老後家計の現実である。 そこで、寝たきり時の排泄便臭低減、「におわない介護」による課題克服を試みた。 

【方法】
排便と清拭に対策を施す「パウチ埋込パン法」を検証した。 1)排便 パウチ収納によって便臭拡散を防いだ。肛門は狭い凹部にあってデリケートな皮膚が周りを囲む伸縮性開口である。 単純な押圧や粘着ではパウチ開口部を密着できないから、肛門周囲を下側、両サイド、上側に分けて頑強な密着を達 成した。肛門両サイドへの密着は、尾骶骨付近から鼠径溝までの体表凸面に働く張力を利用する方法を考案した。 2)清拭 臥位の排便は臀部に付着しやすく、清拭に手間取る間にも便臭は拡散する。そこで排便用サイドベッドの該当部にパ ウチの便貯留部を落とし込む陥没穴を設けた。落差が糞便を肛門から引き離して皮膚汚染を抑制する。 

【結果】
男性被験者で試行して便臭の有意な低減を確認した。簡便なシステムで実用的な効果を得た。 

【考察】
サイドベッドは幅50cmで殆どの寝具に付設できる。ベンチとして活用し常備するなら、急な寝たきりにも即応する。 また、介護ベッドのセンター部を相互交換可能なクッションとベッドパンのカセットで構成すれば、排便は介護ベッ ド上のみでシンプルに完結する。こうしたバリエーションを加えて、老々介護や長期臥床など、より困難な状況にも 対応させたい。 生活の場に漂う便臭は、一般の介護関係者を「心が折れる」状況に追い込み、高齢の被介護者を認知症に引き寄せる。 安価な素材で構成される本システムは、寝たきり時の排泄環境を改善して介護の労苦を軽減する。在宅の希望が叶え やすくなり、逼迫する介護資源の有効活用に繋がる。 利益相反:なし