在宅のハードルと「におわない介護」
排泄便臭低減システム
終末期は寝たきりのリスクが高まる。
多くの高齢者は自宅での最期を望むが、寝たきり時の排泄、特に便臭のハードルに阻まれる。
一方で、介護施設には、「入りたくても入れない、入れる施設は払えない」のが老後家計の現実である。
そこで、寝たきり時の排泄便臭低減、「におわない介護」による課題克服を試みた。
方法
「パウチ埋込パン法」(pouch-embedded pan method, PEP法)として、排便と清拭の両過程に対策を施した。
1)排便:
パウチに収納して便臭の拡散を防いだ。
肛門は狭い凹部にあって周りをデリケートな皮膚が囲む伸縮性開口である。
単純な押圧や粘着ではパウチの開口部を密着できないから、肛門周囲を下側、両サイド、上側に分けて頑強な密着を達成した。
肛門両サイドへの密着には、尾骶骨付近から鼠径溝までの体表凸面に働く張力を利用する方法を考案した。
2)清拭:
臥位の排便は臀部に付着しやすく、清拭時の便臭拡散が著しい。
これを最小化すべく、排便用サイドベッドの該当部にパウチの便貯留部を落とし込む陥没穴を設け、充分な落差で排便を速やかに隔離した。
結果
男性被験者で試行した結果、便臭拡散の有意な低減を確認した。
簡便なシステムで実用的な効果を得た。
考察
排便用サイドベッド導入で、布団やベッドなど殆どの寝具がそのまま使えるようになった。
高さを調整できる介護ベッドは特に相性が良い。
更に、介護ベッドのセンター部を相互に交換可能なクッションとベッドパンのカセットで構成すれば、サイドベッド不要の手順でシンプルに完結できる。
バリエーションを展開して、老老介護や長期臥床など、より困難な状況に対応させたい。
生活の場に漂う便臭は、一般の介護関係者を「心が折れる」状況に追い込み、高齢の被介護者を認知症に引き寄せる。
安価な素材で構成される本システムは、寝たきり時の排泄環境を改善して介護の労苦を軽減する。
在宅の希望が叶えやすくなり、逼迫する介護資源の有効活用に繋がる。